ぽっぽや(浅田次郎)

 再度、お知らせです。

2月10日、岩国市教育委員会由宇支所主催のげんきなこコンサートは、事前申し込み不要です。

直接お出でください。

何度も惑わせてしまい、申し訳ありません。(げんきなこ)

 

 

 

 

 

「コロナ籠もりで退屈でしょう。

私が読んだあとで申し訳ないですが、本を送ります。面白かったですよ」

遠くに住む友人から文庫本が届きました。

スマートレターから出てきたのは「ぽっぽや」

国鉄のダッフルコートを着た高倉健が雪の駅のホームに立つ映画告知だけ目にしたことがありますが、映画も見てないし本も読んでいません。

 

年取ってようやく授かった一人娘の生死にも、妻の危篤の連絡にも、駅舎を離れなかった愚直な男の物語でした。

 

読み終わって、考え込んでしまいました。

もし私が妻の立場であれば、どうなのだろう。

娘を亡くした日も仕事をする夫をどう思うだろう。

でも、いい悪いではない、「不器用ですから」という高倉健のCMがありましたが、主人公はこのようにしか生きられなかったということなのでしょう。

そうしたいと望んだように生きて、その生き方を周囲は認めて、よき友人もいて、人生の最後の数日で彼の一番の心の傷であった亡くなった娘にも許されて。

亡くなった娘の言う通り「いいことはなんにもなかったっしょ」かもしれないけれど、生きることはかなしいなあとも思うけれど、それでもこれは幸せな男の物語なのだ、と思ったとき、この物語がストンと胸に納まりました。

 

「あなたの奥さんが危篤です、すぐに来て」

妻の友人からの再三の電話にも関わらず、駅舎を離れない気持ちは理解しきれませんでしたが、奥さんのお茶碗をずっと食器棚に置いていたのにはグッときました。

奥さんには、きっとあちらの世界で許してもらうのでしょうね。

 

浅田次郎さんは「ぽっぽや」で直木賞を受賞されているそうです。

文章のことはよくわからないのですけど、米を磨き抜いた純米酒のように、文にキリッとした深さを感じました。            (写真、yama-p(きなこ)