柿食えば

今日は、患者会の集まりがあり、行き帰りの道中を、Mさん、Yさんとご一緒しました。

車中から広島市内のあちこちの桜を眺めながらのミニドライブです。

話題は、Mさんが最近行かれた法隆寺のことに。

 

30年ぶりに行ったんだけど、大ショックだったんよ」

歯切れのいい関西弁のMさん。ショックって、何が?

「昔は田園の中にぽつんと建ってるお寺だったんだけど、今は開発されて、まわりに建物もできて、雰囲気がまったく変わっていたんよね。

子規の「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の句碑もあったけど、全然「柿食えば」って雰囲気じゃなくなっていたんよ」

そうですか。法隆寺、写真でしか見たことないのですが、じゃあ、わたしがみた写真も、最近のものではなかったのですね。

偶然にも子規の「柿食えば」の話が出てきて、「柿食えばの句、意味わかります?」と、きいてみました。

Mさん、俳句の名手でもあるので、ちょっとドキドキしながら。

「わからんねえ。子規がどこかの茶屋で柿を食べてたときに作ったらしいけどね。

旦那が怒るのよ。なんでこんなんが名句なんかって。」

 

するとそれまで静かに聞いていたYさん。

「あら、わたしは好きよ。きっとその柿はすごくおいしかったのよ。そしたらゴーン、と法隆寺のお寺の鐘がなって・・・、わたしこの歌好きよ。」

Yさん、実はこのブログで絵をコラボしていただいているお方です。

みんなが過ごしているありふれた日常の、でもみんな忘れているあたたかい一瞬を描くことのできる方です。

Yさんの物語をきいていると、理科室の骨格標本に肉がつき服を着たように、子規の句が素敵なものに感じられてきました。

 

Mさんが、「わからんねぇ」と共感くださったのもうれしかった。

Yさんが句に魔法をかけてくださったのもうれしかった。

桜の風景の中、柿の話で心たのしかったミニドライブでした。

                       (絵、安本洋子)(きなこ)

                 (絵をクリックしたら、「ふるさと」が流れます)

 

https://www.youtube.com/watch?v=YC-A8ketfhE&spfreload=10

 

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コメント: 4
  • #1

    村山良子 (土曜日, 15 4月 2017 17:22)

    ある俳句の入門書によると、「言葉には意味のほかにリズムと音色がある。言葉の音楽を大事にして織るのが韻文(詩短歌俳句、謡、オペラ歌謡曲の歌詞)、音楽よりも意味を大事にして織るのが散文。「柿を食べていると法隆寺の鐘がる」は散文、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」は俳句で韻文。違いは五七五のリズムそして「なるなり」で「切れ」が入ったためにさらにリズミカルになっている・・云々」などとたびたび良い句の例としてあげられていました。そしてリズムを刻み音楽を奏でる言葉は口ずさみやすい。覚えやすい。だから時代を超えて歌い継がれるとのことです。あまりにも口ずさみやすいがゆえに凡人にはその良さが分からなかったということでしょうか。

  • #2

    きなこ (火曜日, 18 4月 2017 09:15)

    村山さん、コメントありがとうございます♪
    柿食えば、が名句と言われる理由、また少し理解度アップしたような気がしてうれしいです。
    柿食えば、は「ムズカシイ名句」ですが、村山さんの
    『満開の桜 両岸引き寄せる』
    は、わたしには文句なく名句です。
    読んですぐに情景がうわあと浮かびました。
    原爆ドームのほとり、観光船が行きかう太田川べりに、右岸にも左岸にも咲き誇る桜の風景を私は思い浮かべました。
    いい句ですねぇ。桜の季節が来ると思い出します。
    コメントが遅くなりスミマセンでした。
    初投稿、うれしかったです。ありがとうございました♪

  • #3

    むらさん (火曜日, 18 4月 2017 17:32)

    ブログにコメントを入れるなんて初めてでした。私もやっと人並になれたかな??  正しくは「満開の 花両岸を 引き寄せり」です。日本では古来「はな」といえば桜であるようです。きなこさんの詩心はいつもあふれているのでしょうね。ホームページを開いて、いつもその詩に語られている言葉に驚きというか感動というか、じっと聞き入ってしまいます。警報がでるような雨は怖いですが、こんな雨なら好きです。  春の雨 落ちては消ゆる 水輪かな Ryo

  • #4

    きなこ (火曜日, 18 4月 2017 18:46)

    むらさん、大変失礼しました。
    「満開の花両岸を引き寄せり」
    「満開の桜両岸引き寄せる」
    むらさんのコメントをいただき、あわてて二つの句を読み比べてみたら、雰囲気が全然違いますね。「引き寄せる」では、なんだかたくましい桜に感じられてしまうなあ、はらはらと桜が降る感じは、「引き寄せる」、という強い言葉より、「引き寄せり」というなにかやさしい響きの言葉のほうがあってるなあ、と読み比べてわかりました。
    言葉って、意味だけでなく、響きによってもずいぶん雰囲気が変わるものなのですね。
    確かに、同じ人でも、白いワンピースを着ているか、チェックのプリーツスカートをはいているかで雰囲気が違いますもんね。
    自分が間違ったことを棚に上げてこんなことをいうのもなんですが、とてもいい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。
    あたらしく書いてくださった、「春の雨」の句もいいですね。
    雨粒が落ちて、輪になり、消えて、また落ちて、広がり、消える・・・、その時間と光景が目に浮かびますね。
    またひとつ、心のポケットに、うれしい歌のキャラメルをいただきました♪