山田耕筰 2

赤とんぼの作曲者、山田耕筰の自伝を読んでいます。

オモシロイ、オモシロイ。そして凄い。

幼い頃から音楽が好きでたまらなかったこと。

これでもかと耕筰を襲う困難や事件の数々。

そしてそれをたくましく、明るく乗り越えていく耕筰の心のしなやかさと努力と底力。

何ひとつ私と同じところがない痛快で深い半生記のページをめくっていたら、驚くような共通体験に出会いました。

それは犬に襲われたこと。

 

少年耕筰は、住み込み活版工場時代、先輩に言いつけられての夜の使いの途中で、何度も野犬に襲われて、猫のように樹上に駆け上っていたそうです。

そんな時、耕筰は養父から「犬除けの法」を教わります。

「犬に出会ったら、こちらも四つんばいになって、お尻を犬に向けて向かいあえばいい。」

え!そうなの!?

このブログを始めて間もなくの頃、奇しくも「股のぞき」というタイトルで書きましたが、私も幼い頃、父から「犬除けの法」を授けられました。

それは「野犬に出会ったら、くるりと後ろを向いて、股のぞきで見たら、犬は恐れて逃げる」

東京に生まれ育った山田耕筰と、瀬戸内の島で生まれたわたし。

酷似した法を授けられていた共通点に感動しました。

父の話を、これまで田舎の言い伝えだと思っていましたが、日本全国で言われていたことだったのですね。

 

ただ、その後は、大きく違います。

年耕筰は、その教えを実行し、みごと犬難を切り抜けましたが、わたしは野犬を前に股のぞきをすることが怖くて、犬の集団に追いかけられて、青ざめ駆け逃げただけ。

体験したからわかるのですが、「敵に後ろを見せる」のは、ほんとうに怖いことなのです。

教えを実行できた耕筰と、できなかったわたし。

音楽の才能は比べようとも思いませんが、勇気にも格段の差がありました。

 

                                (絵、安本洋子) (きなこ)