大人になる

大人になる

 

ある日、キッチンの窓ガラスに、小さな鳥がやってきました。

コンコンコン、と音がするので、何かと見れば、小さな鳥がガラス窓にむかって羽ばたいています。

ぶつかったのかな、と思ったのですが、そうではないようです。

窓ガラスにぶつかって、ストンと落ちた小鳥は、ふたたび窓枠に止まって、またガラス窓に向かって羽ばたき、窓ガラスに押し返されて、落ちて・・・を繰り返します。

もちろん、ガラス窓があるのですから、いくらはばたきを繰り返しても、小鳥はくちばしを窓にぶつけた状態で、空中に浮かんで、やがてストンと落ちるだけです。

それを何度も繰り返しているのです。

 

ネットで調べてみたら、カワラヒワのようでした。

どうやらオスのカワラヒワの子供のようでした。

 

カワラヒワの子の訪問は、毎日続きました。

初めは、一日一度だった訪問は、日に2回、3回、4回・・・、と増えました。

来るたびに、ガラス窓に向かって、はばたいています。

どうやら、意識的にぶつかっているようです。

 

「窓ガラスにぶつかるのが、オモシロいんかね」

想像もしなかったお客様に

「何かいいことの御つかいかも!」

と、元気さんは喜んでいました。

 

ところが。

ある日から、ぴったりとカワラヒワは来なくなりました。

一日待ち。

二日待ち。

三日待ち。

何の前触れもなく、何の理由もなく、カワラヒワの子は来なくなりました。

 

きっとカワラヒワは大人になったのでしょう。

 

もう、窓ガラスにぶつかって遊ぶことを、たのしいと思わなくなったのでしょう。

料理を作りながら、ふと窓を見て、カワラヒワの子のかわいかったことを思い出しています。 

                       (写真 ジュリエットさん)(きなこ)