注連飾り

時々通る小さな交差点に、古くてとても小さいアパートが建っています。
アパートの横には、かけ上がるとカンカン音がしそうな鉄の階段がついていて、二階の家に上がるようになっています。
ベランダはなくて、窓から差し出すように洗濯物が干されています。
信号待ちの道路から見える家の窓からは、五センチ間隔くらいでぎっしり洋服が干されています。
何人ご家族なのか。

今日は乾くかなあと、そこで信号待ちをするたびに空模様が気になりながら、でもその干し方が丁寧なのに心ひかれ、信号待ちのたびに、どんなご家族なのかなと、ホワッとあたたかい気持ちで車を発進していました。

今日、またそのアパートの前で信号待ちをしていたら、その家の玄関に、なにか赤い色が。
え?と目を凝らしたら、しめ飾りでした。
しめ飾りにも「大・中・小」があって、私も毎年スーパーの店先で迷うのですが、その家のしめ飾りは、とてもかわいいしめ飾りでした。

結婚して間もない頃、私たちが住んでいた社宅も、脱衣場も洗面所もないような古くて小さいアパートでした。
そこで年子の子二人を育てていました。

同じくらいの年の子供がいらしたお隣の奥さんと、自転車のかごに上の子供を乗せて、下の子は背中に背負って、遠くの安売りの商店まで、買い出しに行っていました。
毎日たくさん洗濯し、何度も掃除機をかけて…、夢も見ないくらい毎日慌ただしかったけれど、今思うとあの日々は幸せな毎日でした。

信号待ちのしばしの時間に、記憶は20年を旅し、どうぞこのご家族に、今年もいいことがたくさんありますように、と思いながら、車のアクセルを踏みました。

           (写真、yama-p)(きなこ)