もうひとつの「最後のひとこと」

「最後のひとこと」を、読んでくださったジュリエットさんから、びっくりのメールをいただきました。

ジュリエットさんもつい最近、あるテレビ番組をご覧になって、わたしが感じたのと同じことを感じていらっしゃったそうなのです。

 

その番組とは、1月20日の「世界ふしぎ発見!」

その番組に、「その言語を母国語として話す最後の一人」が出演されていた、というのです。

 

 

ジュリエットさんとの偶然の一致に驚き、さっそくネットで検索して、番組を見てみました。

旅した土地は、パタゴニア。

パタゴニアは、南アメリカの先っぽで、南極大陸に近いあたりです。

もともと先住民族が住んでいたところにヨーロッパからの侵攻があり、いくつもいた民族はほとんどが滅び、今や、純潔の人としてはたった一人の女性が残るだけだそうです。

 

 

その方は、クリスティーヌさんという89才のおばあさんでした。

クリスティーヌさんはスペイン人の男性と結婚して、10人の子供と、数え切れないほどの孫や玄孫もいるそうですが、10人の子供は、原住民の流れだと知られるとマスコミに追いかけられたり、いじめられたりするというので、皆、スペイン語しか話せないそうです。

 

 

「世界ふしぎ発見!」では、23年前にも彼女を取材していて、お姉さんと二人仲良くお話しになっている様子が、今回も再放送されました。

しかし、15年ほど前にお姉さんは亡くなり、今回は、彼女一人でした。

番組の中で、彼女はおねえさんのお墓におまいりをされていました。

そして、スペイン語ではない言葉で「お姉さん、どうして先にいってしまったの?」と話しかけ、涙ぐんでおられました。

 

 

そうだなあ、と思いました。

高橋さんのラジオをきいているとき、わたしは想像できませんでしたが、その言語を使って話す相手がいなくなったとき、その言語を使う場所は、お墓なのですね。

お墓では、時間がタイムスリップして、その人と一緒にいたときのまま、そのときの言葉遣いで話しかけますよね。

 

玄孫までいる89才のクリスティーヌさんも、お姉さんに対しては妹のまま。

お母さんに対しては、娘のまま。

おばあさんに対しては、小さい女の子のまま。

そしてその言葉は、クリスティーヌさんが幼い頃から使っていたままの言葉でしょう。

 

 

クリスティーヌさんの89年は、滅びていくもの、消えていくものと共にあった人生だったと思いますが、今、たくさんの家族に囲まれて、クリスティーヌさんがお幸せそうだったことに、心救われた番組でした。

                     ( 写真ジュリエットさん)(きなこ)

 

 

♪写真をクリックすると、「抱きしめるしかないかなしみ」をお聴きいただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=_MdW9-r0hAs