前向きに

『ドミニカ共和国』という国をご存知でしょうか。
恥ずかしながら私は、カープにドミニカ出身の選手がいらしたな、くらいしか知りませんでした。
ですから、図書館の新刊コーナーで出会った児童書『わたしたちが自由になるまえ』を読みながら、ドミニカってそういう国だったの?と、驚きの気持ちでページをめくりました。
 

第二世界対戦を挟んだ前後数十年、ドミニカは独裁者による恐怖政治が行われていたそうです。
事実をもとに創作されたというこの本の主人公、少女アニータは、支援者ぺーぺおじさん一家の家のクローゼットにお母さんと一緒にかくまわれていて、その様子には「アンネの日記」を思い出します。
 

そんな本の中で、もっとも印象に残った言葉。
『人は前向きに考えなければいけない。 そうやって過去の偉大な人たちは悲劇を生き延びてきたんだよ。』
これは、支援者のぺーぺおじさんがアニータに言った言葉です。
明るく楽しく前向きに。略して、ATM。
これは私たちパーキンソン病友の会の合言葉です。
闘士であるお父さんが連行され、自分たちもクローゼットの中で、ビニール袋の中でぐしゃぐしゃになった料理を食べながら、追っ手の影に怯えているアニータ。
どんなときも前向きに、ということはどんなに難しいか、それでもそれが希望につながることも強く感じた本でした。

 

(「わたしたちが自由になるまえ」 フーリア・アルパレス 作、神戸万知 訳 コブリン書房)

(写真、東道幸弘さん)(きなこ)

  

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