この世界の片隅に

わたしが歌を作った一番初めは、小学2年生でした。

当時はやっていた由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」が好きで、そんな歌を作ろうと思いました。

「夜明けのスキャット」は、♪ルルルルルル ララララララ、を繰り返すあの歌ですが、私が作ったのは、こんな歌。

   ♪雨の日は 晴れだった  

     雨の日は 晴れだった

     ルルルルルル ルルルルルル

    雨の日 晴れの日

     いつも楽しい日よ 

    いつも平和な日よ

 

タイトルはずばり、「雨の日は晴れだった」。

「夜明けのスキャット」に負けない素晴らしい歌ができたと、家族からの絶賛を期待して披露したのですが、「雨の日が晴れって、どういうこと?」と笑われ、がっかりしました。

 

でも、それにもめげず作った2曲目は、「海賊の歌」。

これは、手塚治虫さんの「リボンの騎士」が大好きで、その中に登場する愉快な海賊たちにあこがれて作った歌です。

   ♪アアアアアアア

 オレたちゃ 海賊の手下でござる

    アアアアアアア

   これからパーティーを ひらくでござる

    アアアアアアア

   歌を歌って  踊りを踊ろう

    アアアアアアア

「雨の日は晴れだった」は、「夜明けのスキャット」風(?)のしっとりとしたメロディでしたが、「海賊の歌」は、エンヤトットエンヤトットと船を漕ぐような威勢のいい歌でした。

 

大人になってから弟が、お酒を飲みながらだったかに、

「姉ちゃん、昔も、歌作ってたよね。海賊の歌」と言うので、

「ああ、よく覚えててくれたねぇ。作った、作った。」と言ったら、

「今でも歌えるんだよね、あの歌。

いや、別に好きだったってわけじゃないけどね、姉ちゃんにつかまえられて、教えこまれたから、刷りこまれたっていうか。

今でもたまに頭でリフレインするときあるんだよね」

 

え~っ、わたしそんなことしてた?

都合が悪いことは忘れるのか、記憶になくて驚きましたが、弟に歌わせて満足したのかどうか、私の歌作り第一期は、この2曲で終わりました。

でも、そんなわけで、「この世界の片隅に」、弟と私だけが知っている歌がひとつあります。

 

                                 (絵、安本洋子) (きなこ)