少年

わたしは、パソコンの操作がわからなくて、フェイスブックができません。

ところが、元気さんが私の名前でフェイスブックのコーナーを作ってくれたので、「○○さんをご存知ないですか？」というお知らせが、毎日携帯にとどきます。

どうせ出来ないのだからと、たいていは中身を開かないのですが、ある日、何気なくお知らせを開いて見ていたら、ずらずら並んだ名前の中に、「B　　F県○○中学校」。

え？F県のBさん。

わたしたちが知る人と、名前は違いますが苗字は同じ。

一瞬迷ったのですが、もしかして、と、ドキドキしながら、その下にあったアドレスを初めてクリックしてみました。

画面に出てきたのは、少年の顔。

元気さんがみたらきっと「面構えがいいな」と言うだろう、まっすぐなまなざしの少年が写っていました。

フェイスブックのできないわたしが見られたのはトップページだけですが、「今年はいい年になりますように。」とひとこと書いてありました。

「感動した本」というキャプションを添えて外国のスポーツ選手の自伝がアップしてあり、机の上に置いたその本の後ろに、通信添削の返信封筒が写っていました。

少年は、昨年亡くなった人と、とてもよく似ていました。

賢そうな、立派な少年でした。

その人のことが、私たちは大好きでした。

元気さんが入院していたとき、仕事で近くに来たからと、ちいさな花かごを持って、一人でお見舞いに来てくれました。

男の人が花かごを買うのは恥ずかしかったんじゃないかな、と思いながら、さしてあったカエルのピックに、照れくささととかわいらしさが表れているようで、ほほえましくて、うれしかった。今でもそのカエルは、きょとんとうちの玄関にいます。

 「F県の歌を作ってほしい」と言ってくださって、「辛いけど、この歌が元気をくれます」とメールをくださいました。

 「研究はたのしいですか？」と尋ねたら、「そりゃあ、たのしいですよ」と言われていました。いっぱいいっぱい薬を飲んで、大好きな研究をなさっていました。

フェイスブックの写真の少年と同じ年頃の息子さんがいると言われていました。

きっとお父さんは、きみのそばにいるよ。

きっと、今年はいい年になるよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（写真、yama-p)（きなこ）